(仮)とりかぶ! 02 残余利益方式とは

ひとことで言うと

会社の株式の値段を、「いま会社が持っている財産」+「これから稼ぐ力」 で測る方法です。

これまでの類似業種比準方式が「よその似た会社と比べていくら」という相対的な 測り方だったのに対し、残余利益方式はその会社自身の数字だけで 評価額を決めます。ここが最大の違いです。

「これから稼ぐ力」をどう測るか

素朴に考えると、利益が出ている会社は価値が高そうです。しかし、それだけでは足りません。

たとえば1億円の財産を持つ会社が、年に100万円しか利益を出していないとします。 利益は出ています。でも、1億円を持っていながら年100万円しか生まないのなら、 銀行に預けたり他に投資したほうがましかもしれません。

つまり、「それだけの財産を預けているのだから、これくらいは稼いでくれないと困る」 という水準があるはずです。この水準を上回った分だけが、本当の意味での 「稼ぐ力」だと考えます。

残余利益 = その期の利益 − (前期末の純資産 × 株主が期待する収益率)

この「株主が期待する収益率」を還元率と呼びます。 そして差し引かれる金額を株主資本コストといいます。 残り(=残余利益)がプラスなら、株主の期待を上回る経営ができている会社です。

それを5年分、足し合わせる

理論上は、将来ずっと先までの残余利益を足すのが正解です。しかし、来年の利益すら 読めないのに、無限の将来を予測することはできません。

そこで資料では、将来5年分に区切ることが提案されています。 上場企業の中期経営計画がおおむね3〜5年であることも参考にされています。

では、その5年分の利益をどう予測するのか。ここも割り切っていて、 過去5年の実績の平均を将来も続くものとみなします。 経営者が自由に将来計画を立てて評価額を動かせてしまっては、課税の公平が保てないためです。

さらに、将来のお金は今のお金より価値が低いので(来年の100万円は今の100万円より 価値が低い)、各年の残余利益を現在価値に割り引いて足します。

実際に計算してみる

資料に載っている計算例で見てみましょう。

1年目の株主資本コストは 1億円 × 8% = 800万円。利益が1,000万円ですから、 残余利益は200万円です。

2年目はどうなるか。利益1,000万円のうち配当200万円を払うと、純資産は 800万円増えて1億800万円になります。すると株主資本コストは 864万円に上がり、 残余利益は136万円に減ります。

同じように進めると、残余利益は 200万 → 136万 → 72万 → 8万 → ▲56万年々小さくなっていきます。稼いだ利益を社内に貯めるほど、 期待される水準も上がっていくからです。

これらを現在価値に割り引いて合計すると約327万円。直前期末の純資産1億円に足して 1億327万円。ここにしんしゃく率0.8を掛けて、 評価額は 82,613,654円となります。

この計算は試算ツールの「計算例①(P26)」ボタンでそのまま再現できます。

なぜ変えるのか

資料は、現行制度の問題点として2つを挙げています。

1. 類似業種比準方式に理論的な裏付けがない

同業種の上場会社と比べる、という発想自体は分かりやすいものです。しかし 「なぜその計算式なのか」を説明する理論的な根拠や実証的な裏付けがなく、 企業価値評価の他の分野でも徐々に使われなくなってきている、と指摘されています。

2. 会社の規模による不公平

現行制度では、規模の大きな会社ほど相対的に評価額が安くなる傾向があります。 同じ中身の会社でも、規模区分が違うだけで税負担が変わってしまう。 これは、異なる規模の会社の株式を相続した人どうしの間で不公平だ、というわけです。

残余利益方式に一本化し、規模区分をなくすことで、この相対的な不公平が一定程度 解消されると資料は説明しています。

「理論的」といっても、そのままではない

残余利益モデルは学術的な裏付けを持つ評価モデルです。ただし、そのまま税務に 使えるわけではありません。資料も、税務上の評価では 「一定の割り切った評価とならざるを得ない」と明言しています。

実際、次のような割り切りが入っています。

納税者に公認会計士による厳密な企業価値評価を義務付けるのは負担が重すぎる。 だから通達で割り切った運用をせざるを得ない。令和元年の大阪高裁判決も、 そうした割り切りを容認しています。

よくある質問

残余利益方式では、赤字の会社はどう評価されますか。
残余利益がマイナスになるため、直前期末の純資産価額から差し引かれる形になります。 利益も配当もない会社の場合、資料の試算では、還元率2%で簿価純資産の91%、 5%で78%、10%で62%の水準になるとされています。株式を通じて事業用資産を保有する コストが考慮され、簿価純資産より低く評価されるという説明です。
過去5年の利益をそのまま使うのですか。
いいえ。将来も継続して生じるとは見込まれない特別な損益は取り除き、 正常利益に引き直します。オペレーティングリースによる損益、 一時的な役員退職慰労金、過大な役員報酬などが調整の対象として挙げられています。 また、決算期変更などで12か月に満たない事業年度がある場合は、12か月相当額に換算します。
すべての会社が残余利益方式で評価されるのですか。
いいえ。資産の保有・管理を主たる目的とする会社(資産管理会社)、組織再編の直後で 実績値が確認できない会社、開業後5年未満・開業前の会社、休業中・清算中の会社は 「特定の評価会社」として、純資産価額方式等で評価することとされています。
いつから適用されるのですか。
決まっていません。第6回会議の時点では論点の整理が進められている段階で、 還元率やしんしゃく率といった根幹の数値も未確定です。適用時期についても 本資料では示されていません。